「皆さんの話を聴いていたら、自分の仕事の大切さにも気がついた」
「刺激を受けた。自分もがんばろうという気持ちになった」
「これから良い会社になりそうでワクワクしてきた」
これらの声は、企業のコーチング研修の中で、あるテーマについて、皆さんで話していただ
いた後に挙がった感想の一部です。
5、6人のメンバーで一人ずつ自分の話をしていきます。テーマは、「自分の仕事で実現
したいこと」。こんなことができたらいいなあ、こんな成果を作りたいなあといったこと
を自由に語り合っていただきます。すでに実現したという体で話してもらうのがポイント
です。もちろん、そんな説明をすると、すぐには思いつかないと言う人もいます。それで
も、話せそうな人から話してもらっているうちに、雰囲気がどんどん変わっていきます。
現実的ではないことでも、「こうなったらいいいな」と願望を自由に語っていると、し
だいに楽しくなってきます。他のメンバーの話を聴いているうちに、「この人、すごいな
!前向きだな!」と触発されてきます。最初は「話せない」と思っていた人も、話し始め
るようになります。
ここで大切なことは、周りが決して否定しないで聴くことです。「そんなのあり得ないよ」、
「現実的には無理」、「あなたにできるわけないでしょう」といった否定的な言葉を言わ
ずに聴き合います。むしろ、「いいね!」、「すごいね!」、「すばらしいね!」と承認
しながら聴いていきます。ゲーム感覚で、冗談に冗談で返すくらいの気持ちで聴くのがコ
ツです。
そんな冗談で始めた対話でも、「そうなったら本当にいいよね」と期待感が自然と湧いて
きますし、「この人を応援してあげたいな」という気持ちにもなってきます。「この人が
それを実現するためには、私も協力できるかもしれない」といったことを思う人も出てき
ます。
未来のビジョンがあたかも現実であるかのように考え話すことをフューチャーペーシング
と言います。コーチングでは、折々行う手法です。最初は少し恥ずかしかったり、ばかば
かしいと感じたりもしますが、やってみると、思いのほか楽しいものです。そして、同じ職
場のメンバーと話すことで、冒頭でご紹介したような声に繋がっていくのです。
さらに、フューチャーペーシングのすごいところは、話さないより話したほうがよほど現
実化していくことです。話すことで、よりイメージが鮮明になりますし、情報をキャッチ
するアンテナも鋭くなります。繰り返しますが、どんな話でも否定しないで承認し合うこ
とがポイントです。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。