【「失敗はない」とはいえ】

「どんな結果にも失敗はない。体験と学んだことしかない。学びを次に活かせばいい。と
いうことはよく理解できます。それでも、ここで失敗するともう次はないという現実も実
際にはあります。年齢制限がある昇格や資格試験などです。そんな次はないチャンスを逃
してしまった相手には、どんな言葉をかけたら良いでしょうか?」

ある管理職の方から、研修中にこのようなご質問をいただきました。
皆さんだったらどんな言葉をかけますか?研修の中で、他の参加者の皆さんと一緒に共有
したことをぜひ共有させてください。

私たちはつい目の前の「結果」に意識が向きがちです。しかし、視点をもう少し引いて、
その人のキャリアや人生全体の流れの中で捉えてみると、一度の結果がすべてを決めるわ
けではないと言えます。

例えば、昇格試験に落ちたという事実は、その瞬間だけを見れば、失敗と言えるでしょう。
決して望ましい結果ではありません。ただそれが本人にとって、より良い道を選びとる
きっかけになることもあります。実際、管理職試験に合格できなかった人が、後に、社内
一のスペシャリストとして会社を牽引するに至ったという事例を紹介してくださった方も
いました。

「昇格試験に落ちたから、もうこの人はおしまいだ」などと、こちらが決して思わないこ
とです。そうすると、かける言葉が自然と湧いてくるのではないでしょうか。例えば、
「今回選ばれなかったことには、きっと意味がある」、「もっと自分に合った役割やチャ
ンスがこの先に待っているんだと思う」といった未来を信じる言葉をかけてあげたいとお
っしゃった方もいました。

その際に心がけたいのは、こうした前提です。「結果がどうであれ、その人の価値は変わら
ない」、「どんな状況でも、自分の道を切り拓く力がその人にはあると信じる」、「うま
くいかなかった経験にこそ学びと成長の種がある」、「今はまだキャリアの物語の途中で
しかない」。

リーダーの言葉は、部下にとって現実の見え方を変える力を持っています。本人が絶望し
ても、リーダーは希望を見出す存在であり続けていただきたいです。この結果をどう乗り
越え、何につなげていくのかに目を向ける。
これこそが、目先の結果を超えて、真に相手のキャリアや成長を支援する姿勢ではないか
と思います。

一つのご質問から、こうした事例や具体的な言葉かけ例が引き出されていく時間はとても
楽しいです。貴重なご質問と熱心な対話に心から感謝いたします

2025.06.01
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投稿者

石川尚子

講師 石川尚子

パーソナルコーチを行う傍ら、「夢をかなえるコミュニケーション」「自発的な部下の育成」等をテーマとしたコーチング研修講師として活躍中。

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