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第8回 続・松下幸之助の経営心話      【借入金を減らすには、① 決意と、② ムダの徹底的排除】

いま、借入金が資本金の5倍あるが、自己資本を蓄積する方法を教えろということですな。それは、非常に肝要なご質問だと思いますが、なかなか100万円、200万円の授業料では、教えることはできませんな。(笑)


まあ、すぐに自己資本には置き換えられないでしょう。しかし、逐次自己資本に置き換える方策をとることは出来ると思うんです。それは、あなたご自身の決心から始まらないといかんです。これはできない、難しいと言っておったら、おそらくできないでしょう。


しかし、いっぺんにはやれない。だからいま5倍ある借入金を1年で4倍に減らすということであれば、そう難しく考えなくてもやれるでしょう。


結局、儲けるより仕方ないですよ。そのためには、儲かるような仕事をせねばならない。そういうことに深い強い決心をする。


また、思いを変えて、会社に帰ったら、どこにムダがあるかを発見する。その一歩から始めないと、ダメやと思います。発見しようという心があれば、ムダは随所にあると思うんです。


あなたの会社の経営について、私は知りませんけれど、完全無欠やとは思いません。たくさん欠点があると思います。その欠点をいっぺんにやらなくてもよろしいから、一つずつ拾っていけば、遠からずして、自分が思うようになると思います。


だから、それは心配ないですよ。そういう勇気を持てばね。


(昭和40年2月  協力工場懇談会)

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(江口克彦のコメント)


要は、経営に奇策はないということでしょう。借入金を減らすには、(1)減らすんだと決意すること。(2)いっぺんに減らそうと思わず、時間をかけて計画的に減らすこと。(3)そのためには、売り上げを伸ばし、利益を確保すること、そして(4)経営のムダを徹底的に排除することを、松下幸之助さんは、ここでは挙げています。


自己資本は、資本金と内部留保を合算したものですが、つまるところ、内部留保をいかに蓄積するかが大事になります。では、内部留保を、どれほど蓄積すればいいのかというと、もちろん、多ければ多いほど、ということになります。


しかし、経験的に言えば、経営、商売が機能不全に陥っても、ひとりの従業員、社員もリストラすることなく、2年間、経営、商売をそのまま維持出来る内部留保を蓄積することが、ひとつのメドになると思います。


そこまで内部留保を蓄積すれば、それからは、従業員、社員の給与を上げていく、彼らの所得にまわしていくべきでしょう。そうすることによって、従業員、社員の所得は、業界最高になり、社内は、一層まとまり、したがって、ますますその会社は成長発展することになるでしょう。


借入金があるなら、計画的にゼロにし、いわば、無借金経営を実現し、それだけでなく、社員の、従業員の所得を増やすこと。そのような経営、すなわち、ダム経営を、松下幸之助さんは言外に話しているのだと思います。

2025.04.15
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投稿者

江口 克彦

講師 江口 克彦

松下幸之助のもとで23年間、直接指導を受ける。 現在、経営者塾を主宰して、松下幸之助の経営哲学の講義を続けている。札幌の「松翁会」、名古屋の「壷中の会」など全国数ヶ所で行われている。            内閣府 沖縄新世代経営者塾 塾長、憲法円卓会議 座長、内閣府 イノベーション25戦略会議 委員、内閣総理大臣諮問機関経済審議会 特別委員、松下電器産業株式会社 理事等を歴任。

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