「炭次郎型社員」をつくれるか

今も話題になっているのだろう。コーヒーショップで、『鬼滅の刃』のグッズを売っているのには、びっくりした。コンビニでは、そのキャラクターをプリントした飲料水が売られていた。まだまだ「鬼滅は不滅か」と思ったものだ。

全巻23冊を読んでみた。あらすじはこうだ。時は、大正時代。主人公の炭次郎(たんじろう)が、街に炭を売りに行く。夜遅くなったので、その町で泊る。翌日、家に帰ると、父母兄弟が鬼たちに殺害されている。ただ一人、妹だけは、鬼になっていたが、生きている。炭次郎は、殺害された家族の復讐と、その妹を人間に戻すために、「鬼殺隊」に、命がけの訓練試練を耐え抜いて、入隊する。数人の隊員の仲間たちとともに、鬼たちとの激烈な死闘を繰り返しながら、ついには、鬼の総元締め・鬼舞辻無残(きぶつじむざん)を討ち果たし、家族の仇を取り、また、妹を人間に戻すことに成功するというストーリーである。

結局、炭次郎が、文字通り、命を懸け、想像を絶する訓練、試練に耐え抜くことが出来たのは、鬼の総元締めを討とう、討たなければならないという絶対的な「目標」があったからだということである。

このことは、なにも炭次郎に限ったことではあるまい。企業の経営においても、社員が大いに実力を発揮するためには、「目標を持たせる」ということが、きわめて大切だということが分かる。

松下幸之助さんは、「社員に適切な目標を示し与えない経営者は、経営者たる資格はない」と言っているが、そのような理由からだ。実際、「目標」が与えられれば、社員たちには、自己向上と、その目標を達成するための創意工夫や、皆で協力する姿勢が生まれてくる。おのずと社内も活気が溢れ、成果もあがってくる。

「仕事を与える」以前に、「明確な目標を与える」ことをしてやらない限り、これからは新入社員のみならず、中堅社員たちも、次々に退職するであろう。

社員に「目標」を提示することが、経営者、社長としての重要な役割であり、その提示が出来ないならば、経営者、社長をみずから辞する以外にないというゆえんである。

社員に目標を提示すれば、冒頭の『鬼滅の刃』の主人公・炭次郎ではないが、壮絶なまでではなくとも、全力を出し切って、「目標」に向かって、仕事に取り組んでくれるだろう。「炭次郎型社員」をつくれるかどうかは、経営者、社長の「目標」の提示が、正しく出来るかどうかにかかっている、ということである。

                       

2022.07.01
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投稿者

江口 克彦

講師 江口 克彦

松下幸之助のもとで23年間、直接指導を受ける。 現在、経営者塾を主宰して、松下幸之助の経営哲学の講義を続けている。札幌の「松翁会」、名古屋の「壷中の会」など全国数ヶ所で行われている。            内閣府 沖縄新世代経営者塾 塾長、憲法円卓会議 座長、内閣府 イノベーション25戦略会議 委員、内閣総理大臣諮問機関経済審議会 特別委員、松下電器産業株式会社 理事等を歴任。

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