侮れない雑談の効果

例えば、同じ法人の中にいくつかの組織があるとします。人事異動などによって、折々に人が入れ替わったりはしますが、他と比べて成果をあげている組織には、やはり共通点があるなと感じます。
「メンバー同士のコミュニケーション量が圧倒的に多い」ということです。コーチング研修の中でも、「コミュニケーションは質より量」とお伝えしていますが、様々な組織を見ていると、「量が増えることによって質が高まっていく」ことを実感します。

コーチング研修に限らず、新入社員研修や管理職クラスの研修でも、グループディスカッションなど、参加者が相互にコミュニケーションをとり合う場をなるべく多く設けるようにしています。対面研修であってもオンライン研修であっても同様です。参加者同士のディスカッションの様子をご覧になっている担当者の方が、時々こんなことをおっしゃいます。
「雑談になっているグループもあったようなので注意していただけませんか」。

与えられたテーマにそって話し合ってほしいというお気持ちはよくわかるのですが、一見、この雑談と見える時間には非常に価値あることがたくさん起きています。まず、お互いがとてもリラックスして話したいことを話しています。研修用の建前のコメントではなく、本音が語られていることが多いです。メンバー同士の相互理解が進んでいます。「皆も同じような状況なんだな。自分もがんばろう!」とモチベーションが高まったり、「そんな考え方もあるのか」と気づきが引き出されたりしています。研修効果に繋がる現象が起きていることも多々あるのです。

最近は、リモート環境になったり、効率を重視したりするあまり、雑談をする時間が少なくなっている職場も多いのではないでしょうか。日頃から、何でも話せる環境や雰囲気がないと、「こんなことを言ってもいいのかな」、「今、こんな相談をしてもタイミング的に大丈夫かな」といった考慮が生まれます。伝えるべきかどうか迷っている間に、かえって無駄な時間が増えます。伝えるべきことがタイムリーに伝わらない弊害が起きます。

コミュニケーション量が多い組織を見ていると、「いつでも何でも言える雰囲気」が、仕事の効率をあげ、改善や提案を生むのだと感じます。リモート環境だからこそ、あえて週に1回、定期的にオンラインで雑談会の時間をとるようにしているという職場の話も聞くようになりました。人との接触が制限されがちな昨今、一見、本質的ではない雑談がもたらす効果を侮ってはいけないように思います。

2021.07.01
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投稿者

石川尚子

講師 石川尚子

パーソナルコーチを行う傍ら、「夢をかなえるコミュニケーション」「自発的な部下の育成」等をテーマとしたコーチング研修講師として活躍中。

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