目標なき経営は経営にあらず

経営に取り組むのも、人生に取り組むのも同じこと。目標を立てなければ、経営は成功しないし、人生は充実しない。第一、日々、なにをすべきか、毎日、どのような過ごし方をすべきかも分からない。経営も人生も、何のために、そして、どのような心構えで、その目標を達成していくか、成果を出すかが、「成功の絶対必要条件」と言える。


イチロー選手が、メジャーで輝かしい結果を残したのも、いま話題の大谷翔平選手でも、みずから目標を考え、その達成のために、日々、人並みならぬ努力を重ねたからであろう。イチロー選手は、小学校5年生の作文に「将来、僕はプロ野球の選手になる。そして1億円プレイヤーになる」というようなことを書き、そして、友達との遊びもほとんどせずに、ひたすら、バッティングセンターに通い続けている。いま、なにをしなければならないかが、分かっていたからだ。大谷選手も、「大谷曼荼羅」でご承知と思うが、真ん中に「8球団1位指名」を目標に掲げている。
私が、感銘を受けるのは、両選手とも、人間的成長をも心掛けていること。イチロー選手の、野球道具を丁寧に扱うことが、米国民から尊敬され、大谷選手が、グランドに落ちているゴミを拾い、ズボンの後ろポケットに入れる様子に、米国民は絶賛している。彼らは、なんのために、また、なぜ、野球選手になるのか、そのために日々、どんなトレーニングをすればいいかを考えて、実行し、その思い通りの結果を出している。


松下幸之助さんの経営においても、「会社は、世のため、人のために存在する会社」。だから、「社員、心を一つにして、熱意と誠意と素直な心をもって、それぞれが仕事にあたり、また、日々、感謝と反省をする」、そういう心構え。そして、そのために、3年後に、あるいは、5年後、10年後に、経営をどのようにしていくか、最終目標を達成していくかを考え取り組んでいく。そういう松下幸之助さんの経営の取り組み方が、ゼロから出発した松下電器を、70年間で、実に7兆円の世界企業に育て上げたと言っても過言ではない。
なんのためにわが社は存在するのか、どのような心構えで経営、仕事に取り組んでいくのかという経営理念と、最終目標、そして、その最終目標を達成するための日々の具体的目標がなければ、経営は存続不可能。そのことを、経営者は知っておくべきだ。松下さんの言う「目標なき経営は、経営にあらず」は、まさに至言であると思う。

2022.02.15
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投稿者

江口 克彦

講師 江口 克彦

松下幸之助のもとで23年間、直接指導を受ける。 現在、経営者塾を主宰して、松下幸之助の経営哲学の講義を続けている。札幌の「松翁会」、名古屋の「壷中の会」など全国数ヶ所で行われている。            内閣府 沖縄新世代経営者塾 塾長、憲法円卓会議 座長、内閣府 イノベーション25戦略会議 委員、内閣総理大臣諮問機関経済審議会 特別委員、松下電器産業株式会社 理事等を歴任。

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