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第23回 続・松下幸之助の経営心話      【経営、商売は、日頃の心掛けが大事】

物事がうまくいかない場合には、とかく、こういうことが原因でうまくいかなかったのだ、ということをよく考えるものです。


しかし、そういういろいろな困難な原因も、事前に察知して除去していれば、問題は起こりません。すなわち、用意周到な計画を立てて実行しておったならば、失敗というものは、ほとんどないといってもいいと思うのです。


ところが、実際には、次々と失敗があるというのは、日頃、為すべきことをしていない、そういうところに多くの原因があるのです。


そして、反省すべき点は、他に求めず、自分にあると考えねばなりません。


競争が激しいから、経営が困難になったということは、その会社なり商店が、日頃から、為すべきことをしていないから、困難を感じるのです。為すべきことをなしていれば、激しいだけ、返って、高く評価されて、お得意が集まってくることにもなると思います。


それが反対に、他にお得意をとられてしまうということは、やはり、日頃から為すべきことを為していない、また、お得意を集める実力というか、魅力に欠けるところがあるから、そうなるのだと思います。


そして、後になって“ああいうことがなかったら、うまくいったのだ”と、お互いに慰め合うわけです。傷を舐め合う。


そのような慰め合い、舐め合いより、深い反省、原因の追及をし、一人ひとりが、すべての原因は、自分にあるのだと考えねばなりません。


そうすれば、失敗は絶無になると言ってもよいのではないかと思うのです。


(昭和34年10月  営業所長会議)


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(江口克彦のコメント)


火事になる。大火事になる。燃えさかる炎に狼狽(うろた)えて、バケツ一杯の水をかけてみる。友人が持ってきてくれた小さな消火器を必死に使う。しかし、それで大火事がおさまるわけはありません。


そのうち、サイレンを鳴らして、消防車が駆けつけてくれますが、もはや、延焼を防ぐのに精一杯。ただただ崩れ落ちる我が家を呆然として見ているだけとなります。


どうして、大火事になって全焼してしまったのかというと、日頃から、消火器を要所要所に配置しておくとか、スプリンクラーをつけておかなかったからです。


経営、商売も同じこと。常に「消火器」を用意しておく、「スプリンクラー」をつけておく。いわば、内部留保を貯めておく、ムダを徹底的に排除しておく、社内の風通しをよくしておくとか、そのような為すべきことを、日頃から為しておけば、大火事になる前に、ボヤ程度でおさめることが出来るでしょう。


そのためには、ボヤのときに、徹底して反省する、こうなったのは、自分に責任があると考える。


そういう反省にたって、改善改革をしていけば、失敗は絶無になるということでしょう。


不況は、私たちに、松下幸之助さんの「日頃が肝心」、「常の準備が大事」ということをしっかりと教えてくれているようにも思います。

2025.12.01
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投稿者

江口 克彦

講師 江口 克彦

松下幸之助のもとで23年間、直接指導を受ける。 現在、経営者塾を主宰して、松下幸之助の経営哲学の講義を続けている。札幌の「松翁会」、名古屋の「壷中の会」など全国数ヶ所で行われている。            内閣府 沖縄新世代経営者塾 塾長、憲法円卓会議 座長、内閣府 イノベーション25戦略会議 委員、内閣総理大臣諮問機関経済審議会 特別委員、松下電器産業株式会社 理事等を歴任。

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