コーチングに出会って、私自身が得た恩恵は数知れませんが、とりわけ、「自責」で
生きる習慣が身についたことは、日常のストレスの軽減に大いに役立っています。
コーチングでは、「他責」(=他者のせいにする)から「自責」(=自分事と捉える)
へ意識が向かうよう対話をしていきます。
例えば、「何度言っても、部下が言った通りしてくれない」という不満を持っている
相手に対して、「言った通りにしない相手が悪い」というスタンスで話し合っていて
も何も解決しません。本人の不満も解消されません。そこで、「どういう言い方をし
たら、部下は理解しやすいでしょうか?」といった質問で解決策を探っていきます。
これが「自責」に意識が向かう対話です。
ところが、こういうお話をすると、時々、このようなご質問をいただきます。
「他責にしないのは良いのですが、逆に何でも自分のせいだと抱え込んで、落ち込ん
でしまう人にはどう接したら良いでしょうか?」。「自責」を「自分を責めること」
と捉えてしまうとそうなるのかもしれません。しかし、それは「健全な自責」とは言
えません。
他者を責めても自分を責めても、解決には向かいません。どちらも建設的な姿勢とは
言えません。「健全な自責」とは、他者も自分も責めることなく、自分ができること
は何かを考える姿勢です。
この健全な姿勢でいるために必要なのが、自分自身に対する「受容」です。「私の能
力が低いから部下は聞いてくれないんだ」と卑下しても何も変わりません。「そうか、
この伝え方では相手には届かなかったんだな」と事実をありのままに受けとめます。
(受容)そして、「次はどんな伝え方で関わってみようか?」と自分に問いかけます。
これが「健全な自責」のプロセスです。
先日、ある研修で、興味深いお話をうかがいました。「会社の備品を誤って壊してし
まった人がいました。本人は『自分のミスです。以後注意します』と恐縮した姿勢だ
ったのですが、本人が反省するだけで良いのかと思いました。そもそも、使い方は適
切だったのか、置く場所はどうなのか、他に防ぐ方法はないのかを話し合う必要性を
感じました」。
これこそが、「健全な自責」を促す関わりだと感じます。ミスをした本人が自分を責
めて反省して終わりではなく、起きた事実を受容し、「次はどうしたら良くなるのか
?」を一緒に考えます。反省を学びに繋げる対話です。この関わりが「健全な自責」
に立てる人を増やし、健全な組織を作っていくのではないかと思います。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。