過去3年間、会社は利益を上げていない。借入れ金をふやし、倉庫の在庫品を減らして、実質的には欠損してきた。こういう経営であってはならない。本月からは少なくとも利益をあげて行く。どうしても利益を生んで行かなければならない。
皆さんが、朝から晩まで働いた成果が、ゼロではいかんということである。働いた成果として、必ず利益が出なければならない。
これをなし得ないような経営では、絶対に意義がない。いやしくも、数億の金を使い、数千台の機械、数百棟の建物を使用し、7,000人が朝から晩まで働いて、なんら利益も出ないということは、国家を貧困にし、会社を衰微させ、従業員が貧困になることでしかない。
このような能のない働きに終始してはならない。われわれが産業人であるならば、これだけの人の働きの成果を黒字にもって行き、国家の繁栄と社会の繁栄、従業員の生活向上になるような成果ある仕事を断じてやるということを、はっきり認識しなくてはならない。
そうでなければ、あって甲斐ない存在であると考える。あって甲斐ない存在であるならば、松下電器は解散して、よろしいものであると思う。
(昭和24年1月10日 経営方針発表会での話)
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(江口克彦のコメント)
危機の時の経営者の話し方、訴え方のお手本にも、参考にもなると思います。私は、経営者のとき、随分と松下幸之助さんの話し方、訴え方を参考にしたものです。
終戦後、GHQの厳しいデフレ政策(ドッジ・ライン)が強行されたために、日本経済は悪化の一途。もちろん、松下電器も支払い手形の決済にも窮するという苦境に追い込まれます。
そういう厳しい状況を前提にして、この松下幸之助さんの話を読むと、その鬼気迫る、烈々たる思いが感じられます。まして、その場に出席していた幹部社員は、畏怖し、感動し、鼓舞されたことだろうと思います。
事実、朝鮮動乱による日本経済の回復もありますが、翌年から8,300万円の黒字化を実現すると、その後、増益を続け、松下電器は、業容拡大、成長発展の一途を辿ることになります。
松下幸之助さんが、「利益」のことを言うと、「松下さんも、日頃、いいことは言っているが、結局は、儲けること、利益をだすことに執着していたんだ」と思う人もいるでしょうが、松下幸之助さんの利益観は、①社会の貢献した結果が、利益であること。ですから、利益があがらないことは社会に貢献していないことになります。②利益を上げることによって、納税し、多くの国民に還元すること。赤字では、納税はおろか、社員たちへの給料も支払えないということになります。③可能であれば、必要とするところの寄付等を行うことができること。利益を上げることができないなら、例えば、恵まれない人々を助けることもできないでしょう。
ですから、松下さんは、「世のため人のために」、「世界の人々が平和で、幸福で、繁栄して過ごせるために」、それらのために、企業は、「儲けなければならない」、「利益をあげなければならない」と主張していることは、お互いに理解できることだろうと思います。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。