先日、先生がた対象のコーチング研修に、ある学校様にうかがいました。校長先生から、
研修をご依頼いただいた趣旨をお聴きしました。
「うちの生徒は皆、先生の言うことを素直によく聞きます。指導する側からしたら、とて
も扱いやすい良い子たちです。でも、これで本当に良いのかなと思うのです。こちらの言
うことを聞かせるだけだったら、これからの時代を生きる上で必要な力が育たないと思う
のです。自分で考え自分で行動する生徒を育成するためにも、教員には、コーチングの視
点を持ってもらいたいんです」。
校長先生のお言葉に、私も大いに共感しました。「自ら考える力」の重要性と、「だから
コーチングが必要だ!」と感じてくださったお気持ちにとても力づけられました。研修前、
校長先生はこんなお話もされていました。
「うちの学校は、折々に生徒との面談時間をとっていますが、昭和の時代の教員が多いの
です。大半の時間、教員のほうがしゃべっています。もっと、生徒の話を聴いてやったら
いいのに!と思うのですが、良かれと思って、自分の考えを指導してしまう教員ばかりです。
面談にも、コーチングを活かしてもらえたらと思います」。
研修には、校長先生も参加され、他の先生と一緒に、演習にも熱心に取り組んでください
ました。2時間ほどの研修の最後に、私への謝辞と共に、先生がたに向かって、こうおっ
しゃいました。
「先生がたとの面談で、私は全然話を聴いていなかったんだなと今日深く反省しました。
先生がたにはもっと生徒の話を聴いてほしいと思っていましたが、校長の私が一番できて
いませんでした。今後は、もっと先生がたの話を聴かせていただくようにします」。
その謙虚な気づきと潔さに、私は大いに感銘を受けました。我が身を省みて、自分の至ら
なさに気づき、素直にそれを認められるトップは、それだけで人が心を寄せる存在ではな
いでしょうか。「私はできている。あなたはできていない」という姿勢のトップには、な
かなか人は従う気にはなれません。しかし、「私ができていなかった。私もやっていく」
という姿勢のトップであるならば、メンバーは、「私たちも共にやっていきます」という
気持ちになれるのではないでしょうか。
今年もまた、新入社員を迎える時期となりました。「新人だからできていない。教えない
とできない」という視点ではなく、まず、「我が身はどうなのか?」という視点を持ち
ながら関わることで、より新人育成も加速するように思います。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。