コーチングに「暗示のスキル」というスキルがあります。スキルと言ってしまうと、なん
だか相手を操作するために使うテクニックといった印象を持たれる方もいらっしゃるかも
しれません。「あなたならきっとできるよ」、「きっと成功するよ」とプラスの言葉をかけ
て、成功イメージを持つよう促すものです。
時々、良かれと思って、「あなたにはまだ無理」、「そんなに簡単ではないと思うよ」と
マイナスの暗示をかけてしまう人がいます。
心配からくる言葉だと思いますが、最初からマイナスの前提で臨むよりは、やはり、前向
きなイメージを持って臨むほうが成功確率は高まるように思います。
一方で、「暗示」の言葉をかけることに抵抗を感じる方も多いようで、よくこのようなご
質問をいただきます。「例えば、子どもを大会に送り出す時に、『きっと優勝できるよ』
と前向きなことを言っておいて、優勝できなかった時はどう言葉をかけたら良いのでしょ
うか?」
おっしゃる通り、いつでもプラスの暗示通りの結果になるとは限りません。結果は、様々
な状況によって左右されるものです。たまたま強い相手とあたってしまった、コンディシ
ョンがベストでなかったということは往々にしてあります。
そんな時に、コーチが決してブレてはいけないことがあります。結果がどうであれ、「あ
なたは優勝するに足る存在だ」と信じ続けること、そして、結果がすべてではなくチャレ
ンジしたことを承認し称える気持ちで接することです。
「優勝すると思ったんだけどな。相手も強かったんだね」と結果を受けとめ、「負けてい
ないところがたくさんあったよ」と良かった点に焦点をあてて承認します。「チャレンジ
していたね」、「最後まであきらめずに取り組んでいたね」と、結果ではなく過程に焦点
をあてて承認します。何より、相手が結果に対してどう感じているのかに耳を傾け、気持
ちを受けとめることは必須です。
コーチが先走って残念がったり、結果を責めたりしないようにします。結果と相手の気持
ちを受けとめ、それでも「私は信じているよ」、「あなたはよくやっていたよ」という気持ち
を伝え続けます。本人が落ちこんだり、「言葉だけで励まそうとしている」と感じたりし
ていたとしても、コーチがどんな時もブレない姿勢で関わることで、きっと感じとってく
れるものがあります。また前を向いて、「やってみよう!」という気持ちを取り戻してく
れるでしょう。
結果が出なかった時こそ、コーチの真価が問われると捉え、関わり続けていただけたらと
思います。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。