ここ数年、大変お世話になっている企業様での取り組みが書籍になりました。『ツムラの
理念経営 “全社員対話”の継続で企業精神は浸透する』(PHP研究所編)という書籍です。
2018年に、白井一幸さん(2023年WBC侍ジャパン・ヘッドコーチ)からお声がけいた
だいて、管理職の皆様のコーチング研修をお手伝いするところから関わらせていただきま
した。
経営理念がない企業はないと思います。では、それが社員一人ひとり、社内の隅々まで浸透
しているかというとどうでしょうか。ホームページに掲載されているのは知っている、で
も、実際にはどんな文言なのか、それが自分事となっているのかと言うと、正直自信がな
い人も多いと思います。
ツムラ様では、「我が社は何のために存在しているのか」、「自分は何のためにここで仕
事をしているのか」について、全社員が定期的に継続して対話を繰り返す機会があります。
この対話に、コーチングのスキルとマインドが活用されています。管理職の皆様に限らず、
全員でコーチングを学んだほうが対話が活性化するということで、今では新入社員から役
員の皆様まで、コーチングに一度も触れたことがない方はいない組織になりました。
勝ち負けのコミュニケーションではなく、お互いが相手を尊重し合って受けとめ合い、理
念に向かって建設的な対話を重ねていきます。
他責にするのではなく、理念実現のために自分は何をするのかを考え合います。
年々、社員の皆様の対話の質、理念への意識が高まっていることが感じられ感動します。
理念というのは作って掲げるだけでは浸透しません。理念について対話をし続けること、
理念を社員一人ひとりが自分事に落とし込んで自分の言葉で語れるようになること、こう
して浸透していくものだということをツムラ様の取り組みから心底実感します。
そして、社員が理念を自分事として語れる企業は、社員も社会も幸せにしていくと確信し
ます。本当に良いご縁をいただいたと心から感謝しています。
書籍の中では、コロナ禍となって対面研修ができなくなったことが逆にチャンスに転じた
様子や、白井さんと私が全社員の皆様と対話をしながら研修を進めている様子まで幅広く
取材して盛り込んでいただいています。
全社に理念を浸透させるのは難しいと思われがちですが、このような事例があると、大き
な組織でも不可能ではないと勇気づけられます。結局、できるかどうかではなく、やるか
やらないかなのだと思います。
経営者の皆様に限らず、より良い組織、職場を作りたいと考えるすべての方に読んでいた
だきたい書籍です。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。