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【目標がない人、夢がない子ども】

「目標に向かって相手と双方向で対話をし、その達成を支援していくのがコーチングだと
いうことはよくわかりました。では、目標がない人にはコーチングはできないのでしょう
か?」。このようなご質問を、企業で研修をしているとよくいただきます。同様に、学校
や保護者向けの講演会では、「夢がない子どもにはどう接したら良いでしょうか?」とい
ったお声があがります。

こうした言葉を聴くと、私の中でザワザワとした違和感が湧きます。「目標がない人」と
は?「夢がない子ども」とは?誰がそう思っているのでしょうか。確かに、本人が「特に
目標はありません」、「やりたいことがわかりません」と言う場合もあるでしょう。それ
は本当なのでしょうか。

高校生の就職カウンセリングをしていた時も「やりたいことがわからない」と言う子ども
たちとよく面談をしていました。「やりたいことを見つけなければならない」という気持
ちはいったん脇に置いて、好きなことや以前興味があったことなど、何という事もない話
をしているうちに、自然と「こうなりたい」、「これやってみたい」という話が出てきます。
「願望がない人はいないんだな」と思わされました。

「日常、漫然と仕事をしているように見える社員も『もっとこうだったらいいな』と思っ
ていることはあって、そこに本人が気づいて自分事になると、驚くほど主体的に取り組ん
でくれるようになります。『現状維持でいいので』と言う若手も、現状維持するためには
どうしたらいいのかを一緒に考えていると、仕事の仕方が変わっていきます」。これは、
自社で社内コーチをされている方の言葉です。

「願望」がない人はいない。この考え方に立って対話をしているだけで、人の内側から、
目標や夢と呼ばれるものが湧いてきます。
「目標がない人」はいないけれど、「目標がないと見える人」には確かに出会います。

「ない」と見てしまうと、その時点で、コーチングはできなくなってしまいます。コーチ
の仕事は、「相手の中にある答え、可能性を相手と一緒に探りあてること」です。「探り
あてる」とは、「ある」が前提です。「ない」と思ったら、あっても見つけられません。

「目標がない人」、「夢がない子ども」と、こちらが見ている立ち位置を、「今は目標が
ないように見える人」、「今は夢がないように見える子ども」に変えて、対話を重ねてい
くと、可能性は無限です。ですから、目標がないと見える人にもコーチングは大いに使え
ます。今は夢がないと見えるだけと捉えて、対話をたくさん重ねてみていただけたらと思
います。

2025.02.01
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投稿者

石川尚子

講師 石川尚子

パーソナルコーチを行う傍ら、「夢をかなえるコミュニケーション」「自発的な部下の育成」等をテーマとしたコーチング研修講師として活躍中。

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