松下幸之助さんと、ある夜、話をしていると、突然に、「きみ、寝床に入ったら、すぐ眠るか」と聞く。もちろん朝6時に起床して、大抵は夜10時、11時であったし、また若かったこともあったから、寝床に入れば、即寝入っていた。そう応えると、意外な言葉が返ってきた。「そりゃ、あかんわ。きみ、寝床に入ったら、一時間はその日のことを思い起こし、反省せんと」。要は、反省することによって、経営のコツがわかるというのである。
そうか、一時間かと思ったが、その夜中帰宅して寝床に入り、「一時間、一時間」と思い、また「反省、反省」と思う間もなく、前後不覚で寝入ってしまった。
反省。確かに大事なことだ。それを実行すれば、結果に天地の違いが生ずるだろう。なにせ、経営のコツが身につくからだ。但し、松下の言っているのは、失敗したことのみを振り返り、思い出せと言っているのではない。その日一日を振り返って、失敗したことはもちろん、うまくいったことも「思い起こせ」「振り返れ」ということを言っているのである。失敗したことを思い起こし、「なぜ、失敗したのか」、「なぜ、成功しなかったのか」、そして「今度は、このように対応して、失敗を繰り返さないようにしよう」と思案する。しかし、同時に、成功したことも思い起こしながら、「なぜ、うまくいったのか、なぜ、成功したのか」を確認するだけでなく、「もっとうまくできる方法はないか」と考える。これが、松下さんのいう「反省」ということである。
そうした反省によって、当然ながら、問題意識が出てくる。常に、「あのことはどうすればいいのか」、「あの問題のヒントはどこかで見つからないだろうか」、「あのような問題を解決する道は、どういう道だろうか」などと自問するようになる。
そのような問題意識を持っていると、その問題に対する答えが、ひょんなところからポッと見つかるものである。「あ、そうか」と腑に落ちる。そのような問題意識があってこそ、「あ、そうか」となり、解決策が得られるのである。それが、経営のコツを身につけるということにもなる。
もし、松下さんが、成功に傲慢になり、成功も失敗も悩みも深く反省せず、したがって「問題意識」がなかったならば、「経営のコツ」もつかむことなく、その後の「松下幸之助」はなかったであろう。
要は、日々の「反省が、問題意識を生み出し、そこから経営のコツをつかむことが出来る」ということをお互い知っておいたほうがいいのではないかと思う。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。