【「責任」のイメージは?】

たびたびのことで恐縮ですが、先日もオランダの教育現場を視察してきました。コー
チングを基盤とした教育が根付いている現場を訪れると、毎回考えさせられることが
多々あります。

ある小学校を訪問した際、校長先生が「この学校の子どもたちはお互いをよく見てい
て自然に助け合う。そこが私の誇りです」というお話をされました。「そのような子
どもたちを育むには何が必要でしょうか?」とお尋ねしますと、「責任です」と即答さ
れました。

これは、なかなか想定外の答えでした。一体どういうことなのでしょうか。「責任」
というと、日本では一般的に“義務を背負うこと”といったイメージがないでしょう
か。評価や罰につながる何か重たいものといった印象です。この先生は「責任とは、
自分の考えや選択を自分の言葉で説明し実行すること。実行したことをふりかえり自
分で説明できること」と説明してくださいました。

オランダの子どもたちは、日常的に自分の気持ちや考えを言語化し、自分で取り組ん
だことをふりかえる習慣を持っています。
「なぜ自分はそうしたのか?」、「次はどうしたいのか?」を自分で語るプロセスを
繰り返します。そうすると、行動が“自分事”になっていきます。まさにコーチング
のプロセスです。

このことと「助け合う」ことが、どうつながるのでしょうか。何でも“自分事”とし
て捉えると、周囲にも無関心ではいられなくなります。クラスの一員として、「自分
にできることは何か?」を自ずと考えられるようになるのです。

日本では、「責任」という言葉を聞くと、「結果を出さなければ」「失敗したら罰を
受けなければ」といったプレッシャーを感じる人が多いようです。「任せる」ことで、
部下やメンバーに責任を持たせたいという上司、リーダーのお声をよくお聞きします
が、「結果にコミットさせる」ことに意識が向きがちです。本来の責任は、外から与
えるものではなく、本人の内側から湧いてくるものではないでしょうか。

そのためには、日常の対話の中で、相手が自分の言葉で語り、ふりかえる機会を丁寧
に作ることが重要なのです。自分で考え、選択し、説明できる人は、自ら動き、周囲
に働きかける力を自然と発揮します。今回、訪問したオランダの小学校の子どもたちが
育んでいるこの力は、日本の組織で求められている「自律型人材」の姿そのものだと
感じました。

「責任」を、“押しつけられる負荷”ではなく、“自責の立場で自律的な行動をとる力”
とするためにも、対話は大切だと感じたしだいです。

2025.12.01
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投稿者

石川尚子

講師 石川尚子

パーソナルコーチを行う傍ら、「夢をかなえるコミュニケーション」「自発的な部下の育成」等をテーマとしたコーチング研修講師として活躍中。

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