【Well-beingのための対話】

今年もこの時期、オランダへ勉強しに行ってきました。コーチングがベースにあると言わ
れるオランダの教育現場で、実際どんなふうにコーチングが実践されているのかを取材し、
日本で採り入れられることはないかについて考える毎日でした。オランダの小学校や教員
養成学校などにうかがって、校長先生や教員養成に携わる先生がたへのインタビューなど
を行いました。

感銘を受けたことはたくさんありますが、学校経営や教育実習の場でも、対話が積極的に
行われている印象を持ちました。とりわけ、29歳で校長になったというある小学校の校長
先生のお話は印象深く、対話を通して「その人を知るための質問」をたくさんしていくと
おっしゃっていました。

例えば、家族は?趣味は?休日の過ごし方は?といったことから、この人の得意なことや
やりたいことなどを聴いていくそうです。相手を尊重して「人として話す」とおっしゃっ
ていました。「幸せな先生ほど、子どもたちへの教え方がうまい。まず先生たちが良い状
態であることが大切」という言葉も印象的でした。

また、別の小学校の校長先生は、「バイタリティ面談」と呼ばれる面談を定期的にすべて
の教職員(100名)と行うと話されていました。仕事の評価をするのではなく、その人の
家族や生活のことなど、その人の背景を知るようなこと、個人が目指していること、希望
などについて聴いていくそうです。

「今はやる気がわかない」、「研修にも参加したくない」と言う先生がいれば、「今はそ
ういう状態なんですね」と耳を傾け、「それでもOK」と受けとめるとおっしゃっていまし
た。このような接し方をされている方は、もちろん日本にもいらっしゃると思いますが、
本人のWell-being(身体的、精神的、社会的に良い状態)に焦点を当てた面談に重きが
置かれているところが非常にオランダらしい
と感じました。

違う意見も大歓迎。多様な意見を持ち寄ってより良いゴールに向かって対話をしよう!と
いう文化がオランダの教育現場にはあります。
対話をすることがまず優先で、それを面倒がらない、むしろ、対話以外でどうやって解決
するの?というのがオランダの気質です。

日本では昨今、プライベートに踏み込み過ぎることを恐れ、「その人を知る」ための対話
が少なくなってきているように感じます。役割対役割ではなく、人対人の対話が増えてい
くと、仕事に向かう気持ちも変わってくるのではないかと思いました。できていないこと
を指摘するのではなく、その人のことを知りその人の強みに焦点をあてた対話を日本でも
もっと広げられたらと思います。

2025.04.01
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投稿者

石川尚子

講師 石川尚子

パーソナルコーチを行う傍ら、「夢をかなえるコミュニケーション」「自発的な部下の育成」等をテーマとしたコーチング研修講師として活躍中。

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