【国運のある日本は、必ず危機を乗り越え、新たな発展をする】
日本は、2000余年の間、幸いにして、滅びることもなく、今日にいたっています。その歩みは一貫して発展の姿で推移してきたと思います。そして、今日では、世界の先進国の一つに数えられるにいたったのです。
2000年ほど前に繁栄を誇っていたローマ帝国は、今日では存在していません。中国は、現在まで存続していますが、その間には、何度も王朝が交代しており、今日では人民共和国という姿であります。ですから、今の中国としては、建国約30年です。
アメリカは、建国200年を迎えたばかり、ソビエト連邦はキエフ公国の成立から数えても1100年。現在の社会主義国としては、建国60年です。
そのように民族の歴史は非常に長いものを持っていても、国家としての歴史は比較的短いものであり、そのなかにあって日本は、建国以来2000余年もの長きにわたり、一つの国としての主権を保ち続けているのです。
もちろん、その過程には、国家国民の存亡にかかわる非常な危機はあったと思います。しかし、日本はそうした危機を乗り越え、かえってそれを一つの転機として新たな発展を生み出してきているわけです。
そういうところに一つの運命とも言える日本の2000年の歴史の大きな特色があるといえましょう。
(『人間を考える』第二巻ー日本と日本人についてー 昭和57年 初版 36頁)
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(江口克彦のコメント)
ですから、蒙古来襲に打ち勝ち、明治維新も乗り越えて大国の仲間入りをし、また、太平洋戦争敗戦も、むしろ敗戦を糧(かて)にして、あっという間に先進国の仲間入りをしたという日本の歴史を振り返ると、いま、国民の皆さんは、物価高騰、労働力不足などで難渋(なんじゅう)されていると思いますが、必ず、日本の皆さんは、敢然とこの国難に立ち向かい、克服する、いや、日本国民の皆さんなら、きっと出来ると思うのであります。
そして、日本国民の皆さんは、これから、必ず今まで以上の発展を遂げ、繁栄するようになるのではないでしょうか。
と、松下幸之助さんが元気なら、そのようなことを言っているのではないかと思います。
国によって、強運の国、強運の国民があり、国によってそうでない国、そうでない国民があると思いますが、日本は、強運の国、強運の国民のようです。
「ご承知の如く、今日の日本は、かつてないほどの難局に直面しています。しかし、日本は、強い国運がある。そうでありますから、結局において、非常に日本の発展に結びつくと考えても間違いないと、かように信じております」(昭和48年11月27日「松下相談役に対する感謝の会」返礼の話)
強運の国、強運の国民かどうか、異を唱える人もいるかもしれませんが、そう信じたほうが、臥薪嘗胆(がしんしょうたん)、耐え難きを耐え、いまの物価高騰、人口減少、労働力不足のなかにあっても、明るい明日を思うことが出来、希望と勇気と知恵が生まれてくるのではないかと思います。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。