コーチングといえば、「質問によって相手の気づきを促すもの」とよく言われます。
質問することで、相手の考えが深まり、課題解決、目標達成、さらにはその人の成長
につながっていく。これはコーチングの大きな特徴です。しかし一方で、「コーチン
グは苦手」、「質問されると構えてしまう」と言う人も少なくありません。問いかけら
れると、自分が試されているように感じたり、相手にコントロールされるのではない
かと不安になったりするようです。
先日、興味深い体験をしました。名刺サイズのカードに、一枚ずつ質問が書かれたも
のを使ってワークを行いました。講座の参加者はカードをランダムに引き、そこに書
かれた質問に答えていきます。例えば、「あなたは何をしている時が一番楽しいで
すか?」
「10年後、あなたは何をしていますか?」「あなたは周りにどのような影響を与えた
いですか?」といった質問です。
質問の内容自体は、コーチングでもよく使われるものです。ところが、「カードを引
いて答える」形式にすることで、場の空気がずいぶん柔らかいものになるのです。参
加者からはこんな声が上がりました。
「質問がランダムだから意外性があって楽しい」
「コーチングされている感じがしない」
「質問の意図を勘ぐらなくていいから安心して答えられる」
なるほど!と思いました。普段の対話では質問には多かれ少なかれ「意図」が含まれ
ます。「ここに気づいてほしい」、「この方向で考えてみてほしい」といったコーチ
側の思惑が、知らず知らずのうちに相手に伝わってしまうことがあります。その意図
が強すぎると、相手は「誘導されている」と感じ、心を閉ざしてしまうのです。
その点、このカードには「意図」がありません。誰が引くかも、どのタイミングで引
くかも偶然に任されています。この「意図のなさ」が心理的な安全につながり、自然
と心が開き、素直な言葉が出てきやすくなるのです。
ここから気づいたことがあります。それは、コーチングの場においても、意図を持たな
い質問が時に必要だということです。「相手に気づいてほしい」と願う姿勢は大切で
すが、その想いが強すぎれば、相手はその瞬間に強制された気持ちになります。
「ただ、相手の内側にある言葉が湧き出てくることを見守る」。そんな余白を持つこ
とこそ、信頼関係を深める上で大切なのかもしれません。意図を手放した質問には、
相手の可能性を信じて待つ、静かな力があると感じます。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。