私は60年にわたって事業経営にたずさわってきた。そして、その体験を通じて感じるのは経営理念というものの大切さである。
いいかえれば、“この会社は何のために存在しているのか。この経営をどのようなやり方で行なっていくのか”という点について、しっかりとした基本の考え方をもつということである。
それが根底にあってこそ、人も技術も資金もはじめて真に生かされてくるし、それらは、そうした正しい経営理念のあるところから生まれてきやすいともいえる。
だから、経営の健全な発展を生むためには、まずこの経営理念を持つことから始めなくてはならない。
一つの経営理念というものを明確に持った結果、私自身、それ以前にくらべ非常に信念的に強固なものができた。
そして、従業員に対しても、また得意先に対しても、言うべきことを言い、なすべきことをなすという力強い経営ができるようになった。
一言にしていえば、経営に魂が入ったといってもいいような状態になった。そして、それからは、われながら驚くほど事業は急速に発展したのである。
だから、経営にあたっては、単なる利害であるとか、事業の拡張とかいったことだけを考えていたのではいけない。やはり、根底に正しい経営理念がなくてはならない。
(『実践経営哲学』昭和53年刊)
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(江口克彦のコメント)
松下幸之助さんが経営に確信をもって、力強く進めるようになったのは、自分なりに悟った経営理念を、常に絶対的物差しとして、いかなる場合も、あてがいながら、実践遂行したからです。
迷うことがあれば、経営理念に即して考える。戸惑うことがあれば、経営理念に基づいて考える。
そうすることによって、経営において、一貫性のある決断と従業員や世間様の納得が得られたということです。
自分の会社は、①「なんのためにつくったのか、存在しているのか」、②「どのような公義に反しないやり方で経営をしていくのか」ということを確認し、あるいは、確立し、そして、経営者が、その経営理念に殉ずるほどの覚悟を持つとき、その会社は永遠に成長発展するでしょう。
🌲参考
松下幸之助さんが、考えていた「経営理念確立のための前提事項(抄)」
1、人間観を持つこと
(=「人間大事」を根底にすること)
2、使命を正しく認識すること
(=世の為、人の為ということ)
3、利益は目的ではなく、報酬であるとすること
(=利益は世間様に貢献した結果であること)
4、共存共栄に徹すること
(=我が社ファーストで考えないこと)
5、自主経営を前提とすること
(=国や他社などに甘えず、頼らず、アテにしないこと)
6、ダム経営を実行すること
(=余裕ある経営を考え、実行すること ※ダム経営については、別回参照))
7、公義(=社会正義)に基づく経営を行うこと
(=まず、事にあたって、社会的に正しいことはなにかを考えること)
8、人をつくること
(=経営の成長発展は、人材次第であることを考えること)
9、衆知を集めること
(=独断専行は破綻の道と知ること)
10、時代の変化に適応すること
(=常に時代を読み、融通無碍に対応すること)
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。