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衆知を集めることが、会社を発展させる

そのとき、松下幸之助さんは新聞記者の取材を受けていた。ある年の1月の下旬。記者が問う。「松下さんは、衆知経営を実践されていますが・・」。松下さんが応える。「まあ、会社の経営をしていくにあたっては、やはり、いろんな人の声を聞かんといかんですよ。社内の人たちの話も聞く。外部の人の話も聞く。そういうなかで、おのずと、せんならんこと、やらんといかんことが出てきますわな。人の言うことに、素直に耳を傾けていくことが、経営をしていくにあたっては、大事なことですな」。

 とにかく、松下さんは、事あるごとに、誰彼となく、周囲の人たちに話しかけ、尋ねるということが多かった。テレビを観ながら、「キミ、この人の言ったことは、どういうことや」「今の人が言ったことを、キミはどう思うか」という問いかけなどは日常茶飯事。「今度、(松下電器の)社長を交代させようと思うんやけど、キミ、この人をどう思うか」、あるいは、「政治は、どうにもあかんな。キミは、今の総理はええと思うか」などなど、尋ねられることもあった。

 あるとき、松下さんに「尋ねること、ものを聞くこと」について、私が訊ねたらしい。メモを見ると、私が雑談で持ちだしたようだ。そのときの松下さんの話である。

 「昔、わしが、船場(大阪商人のメッカ)で、自転車屋さんで、商売の修業をしておったやろ。仕事をしながら、番頭さんや先輩のひとから、ときとして頭をこづかれ、叱られながらやっていた。特別に辛いという覚えはないけどな。わしは、小学校中退や。まあ、勉強、してへんわけや。だから、いろんなことを人に教えてもらわんといかんかった。わからんことばかりやからな。それで、わかっている人に聞く、自然にね。それで店を始めるようになっても従業員に尋ねたり、聞いたり、そういうことになったと思うな。

 従業員に尋ねると、いろんな話が聞けるし、知識知恵も得ることができるしな。それに、従業員も、大将に、また聞かれるかもしれんと(笑)、勉強するようになる。それだけでなく、わしを慕ってくれるわけや。大将は、自分たちの話を、よう聞いてくれるということやろうな(笑)、早い話。大将にとって、一番大事なことは、威張ることでもなく、部下に賢振(かしこぶ)ることでもなく、会社を発展のさせる道を見つけ出すことや。まあ、衆知を集める経営で、松下電器は発展したんやね」。

会社の発展は、衆知経営にあるということだろう。        

2022.09.15
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投稿者

江口 克彦

講師 江口 克彦

松下幸之助のもとで23年間、直接指導を受ける。 現在、経営者塾を主宰して、松下幸之助の経営哲学の講義を続けている。札幌の「松翁会」、名古屋の「壷中の会」など全国数ヶ所で行われている。            内閣府 沖縄新世代経営者塾 塾長、憲法円卓会議 座長、内閣府 イノベーション25戦略会議 委員、内閣総理大臣諮問機関経済審議会 特別委員、松下電器産業株式会社 理事等を歴任。

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