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【「わからない話」でも大丈夫!】

コーチングのベースとなる考え方に、「答えは相手の中にある」というものがあります。
これは、相手の内側に、本人にとっての最適な答えや可能性が備わっている、コーチはそ
れを引き出すサポートをするという考え方です。

しかし、コーチングを学び始めたばかりの方や、部下に関わろうとするマネジャーの方か
らは、よくこんなお声を聞きます。「自分とは部署が違って業務内容もよくわからないか
ら、聴いても話がよくわからない」、「アドバイスをしたくてもできない。アドバイスで
きないと、相談にのっても何もできていない気がする」。

そう感じるのも無理もないことと思います。私たちは普段、アドバイスや解決策を「与え
る」ことが支援だと考える文化の中で生きています。特にビジネスの現場では「教える」、
「導く」ことができる人が優秀とされる場面も少なくありません。

しかし、コーチという仕事をしている中で、私は日々とてもユニークな体験をしています。
例えば、医療系の学術用語や最新のIT用語満のお話などは、はっきり言って、何をおっ
しゃっているのか、まったく理解できないことがあります。専門外なので当然です。です
が、わからないからこそ、口を挟まず、素直に聴けるのです。

「それで、ここまで話してみて、〇〇さんはどう感じましたか?」、「今、話されたこと
の中で何が一番重要ですか?」などと、相手の思考を問う質問をしているうちに、「そっ
か!まず、こうしてみますね」と相手が自ら答えを見出します。本当におもしろいなと思
います。

先日も、研修の中のコーチング実践体験で「話をしているうちに、『そうか、こうして
みたらいいんだな』と自分の中から答えが出てきました」という感想を伝えてくださっ
た方がいました。この体験こそ、この方の今後のコーチングスタイルを大きく変える
貴重な体験だと感じます。

一度でも「自分の中に答えがあった!」という体験をすると、今度は他者に対しても「こ
の人の中にもきっと答えがある」と信じられるようになるのです。相手が自分とは違う立
場や専門性を持っていても、アドバイスができなくても、ただ相手の話に耳を傾けること
で、本人が前に進む力を取り戻していくのを実感できるようになります。

「聴く」ことは、何かを「してあげる」ことではなく、「相手の可能性を信じて待つ」姿
勢です。たとえアドバイスができなくても、「わからないけれど、話を聴かせてください。
きっと、あなたの中に答えがあるはずですから」というスタンスで向き合うのがコーチン
グの第一歩ではないかと思います。

2025.08.01
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投稿者

石川尚子

講師 石川尚子

パーソナルコーチを行う傍ら、「夢をかなえるコミュニケーション」「自発的な部下の育成」等をテーマとしたコーチング研修講師として活躍中。

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