【ためらわれる言葉】

2年程前に、通信教育講座のテキストの監修をさせていただきました。子ども対象のコー
チングについて学んでもらう講座です。以来折々に受講者の方がたからのご質問を受け付
け、お答えしています。中でも多いのが、「この言葉を言ったら、子どもがプレッシャ
ーを感じるのでないかと心配なのですが、どうでしょうか?」といったご質問です。

例えば、I(アイ)メッセージで、「あなたのこういうところが好きだよ」と伝える言葉
があります。これを言うと、「そうじゃない自分は嫌われる」と子どもが感じないか心配
でためらわれるようです。もちろん、相手によって受けとめ方はさまざまです。タイプや
状況によっては、そう感じてしまう子どももいるでしょう。ですから、「これを伝えたら
この子はどう感じるだろうか?」と相手のことを気づかう気持ちは大切にしていただけた
らと思います。

一方で、ためらいなく伝えられる言葉とはどんな言葉でしょうか。コーチが心からそう感
じている言葉なら、ためらいなど感じる間もなく伝えているはずです。「この子のこうい
うところが私は本当に好きだな!すばらしいな!」と感じた言葉は、きっと自然と発せら
れているのではないでしょうか。そういう時のIメッセージは非常に効果的です。子ども
に限らず、素直に受け取ってもらえます。

同様に、「あなたならできるよ」という言葉もプレッシャーを与えそうでためらわれると
いうお声もかなりの頻度で届きます。そこでまず思い出していただきたいことがあります。
コーチングの前提です。
「相手の可能性を信じて関わる」のがコーチングです。コーチは「心配」するより「信頼」
して相手と関わります。「心配」と感じた時点で、その言葉は使わないほうが良いでしょ
う。相手もコーチ側の懸念を敏感に感じとります。しかし、こちらに揺るぎない「信頼」
があるのなら必ず伝わります。

どんな言葉であっても、「これをそのまま言えばうまくいく」というものはありません。
心にもないことを単なるテクニックとして使ってしまうと、相手は裏の意図を感じとり、
素直に受けとれません。それこそ、プレッシャーや反発すら覚えかねません。

テキストに具体的な言葉かけ例として書かれていると、つい、その言葉を使うことがコー
チングのように感じてしまいがちです。しかし、言葉以上に大切なことがあります。コー
チが相手の可能性を心から信じること、相手のすばらしさに心から感動できること、それ
を忘れなければ、きっと効果的なコーチングができるはずです。

2022.06.01
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投稿者

石川尚子

講師 石川尚子

パーソナルコーチを行う傍ら、「夢をかなえるコミュニケーション」「自発的な部下の育成」等をテーマとしたコーチング研修講師として活躍中。

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