企業の総務課に勤務されている方から興味深いお話をうかがいました。
「私の会社の総務課は、社内の便利屋さん的な存在で、何か不具合が起きると、各職場か
らすぐに呼び出されます。『それぐらい、各部門でなんとか対応してくださいよ』と思う
ようなことまで総務課に言ってくるんです。
例えば、事務所のドアの建て付けが悪いとか、コピー機に用紙が詰まったとか。まあ、社内
の設備や備品関係を管理している部門なので、それが私の仕事と言えば仕事なのですが、出
向いていくと、だいたい文句を言われます。
『どうしてこんなに建て付けが悪いんだ?』、『この前も紙詰まりしていた。また繰り返し
たらどうしてくれるんだ?』といった感じで、『それを私に言われましても・・・』という
気持ちが湧いてきて、モチベーションが下がります。
コーチング研修で、『言葉の裏にあるその人の感情や背景まで聴く』と学んだ時に、ちょ
っと『なるほど!』と思ったことがあったんです。総務課に何か言ってくる人は、基本的
に『何かに困っている人なんだな』と思ったんです。
そう思うとですね、『今度は何が壊れたんですか?』っていう言い方ではなくて、『困っ
ていらっしゃるのはどこですか?』という言い方をこちらもするようになるんですね。で、
相手が困っていると思っているところを直したり解決したりしてあげると、文句じゃなく
て、『いやぁ、助かったよ!〇〇さんも忙しいのに、いつもありがとね!』と言ってもら
えるようになったんです。もちろん、前よりもモチベーションは上がりましたよ!」
総務課に何かを依頼してくる人の背景に想いを馳せた時に、かける言葉も返ってくる言葉
も変わった、モチベーションまで上がったという事例です。私はこの方の感性と柔軟な対
応力に大いに感銘を受けました。
相手の気持ちに想いを馳せることの大切さとモチベーションは環境や他者が上げてくれる
ものではなく、自分がどう受けとり、どう対応するかによって変わるのだということに、
あらためて気づかされます。
不平不満を言ってくる人、反抗的な態度をとる人を見ると、「どうしてこの人はこんな言
い方をするのだろう?」と、こちらも気分が悪くなることがあります。こんな時に、「ど
うしてこの人は・・・」と考えるだけでは、お互いに気分が悪いままです。「この人は何
に困っているのだろう?」という視点が持てると、広い心で接することができそうな気も
します。研修を受けてくださる皆さんの気づきと実践から学ばせてもらうことが非常に多
いこの頃です。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。