一つの事業が成功するには、いろいろな経営要素が集まってなるものだが、その中心をなすのは、人と人との問題である。経営者と従業員の調和協力がなければ、事業は決して成功するものではない。
この経営者と従業員の調和は何によって生まれるかと言えば、その根本は責任感だと思う。経営者としての責任感、従業員としての責任感が自覚され、仕事がそれに伴って進行すれば、事業は必ず繁栄する。
しかし、一口に責任といっても、経営者に7分、従業員に3分の責任があると考えてよい。それゆえ、経営者の責任というものは、はなはだ重いわけである。
(『仕事の夢 暮らしの夢』昭和38年 実業之日本社刊)
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(江口克彦のコメント)
「経営とは、ひとつの目標を達成するために多くの人の心と力を糾合させること」であるとも定義できます。ゆえに、経営者は、明確な目標を提示するとともに人々を統率せねばならないということになります。
そのためには、経営者と社員、従業員の調和協力がなければならない。ですから、もしも、そのことに失敗すれば、経営はたちまちに崩壊し、その会社なり組織は衰退消滅することになります。
経営の失敗、業績の低迷を、経営者のなかには、社員の能力、あるいは、程度の低さゆえと責任を転嫁する人たちが往々にしていることは確か。
しかし、百歩譲って、社員の質に問題があるとしても、では、その経営者は、なぜそれが分かっていながら、社員の質の向上に努力しないのか、従業員の啓発に心を砕かないのか、と考えてみれば、つまるところ、経営者自身の責任ということになるのではないでしょうか。
もちろん、確かに、社員、従業員に問題がないとは言えないかも知れませんが、やはり、社員、従業員の、いわば、「人づくり」「調和の心づくり」ができない経営者に根本的責任がある。そのことを、松下幸之助さんは、明確に、経営者に7分の責任がある、70%の責任があると断じています。
経営者が自社の社員、従業員の程度の低さを嘆くのは、天に向かって唾(つば)するものであること、自分自身の能力の低さを自分で言っていることを、経営者は重々承知しておくべきではないかと思います。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。