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第20回 続・松下幸之助の経営心話      【なに事も、限度を越えてはいけない】

人には、それぞれ個性があり、クセがあり、お酒が好きな人もいれば、饅頭が好きな人もいるというように、その好みをもとに生活しているわけであります。


けれども、そこにはおのずから、一定の限度というものがあるはずで、例えば、お金を貯めることも結構なら、使うのも結構ですが、その限度を超えて吝嗇(りんしょく=ケチ)であったり、また、金づかいが荒く、借金だらけであるということでは、世間が承知いたしません。


やはり、収入の範囲において、ある程度使うということが許されるわけで、この度を越すと信用問題が起こってきて、わが身を滅ぼし、その信用失墜が隣人、ひいては会社に及ぶということになるのです。


遊ぶということにしても、ある一定の限度があり、その限度を決めることは、難しいことですが、そういうことはお互いに十分注意し合って、お互いに行き過ぎたことは、遠慮なく忠言し合うということがよろしいかと思います。


そういうことを盛んにやる会社と、そういうことがあまり問題にしない会社とでは、十年の間には相当な開きが出てくると思います。


松下電器においても、その点に十分留意して、なにをしても、おのずから限度を越えないようにやって、しかも各人が仕事に興味を持ち、そこに使命感と責任感を持って、やっていくということが望ましいと思うのです。

(昭和34年1月10日  経営方針発表会)


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(江口克彦のコメント)


松下さんは、節度というか、ケジメ、ここでいう「限度」というものを、非常に重要視していたと思います。


「度を越す」「馬銜(はめ)を外す」、すなわち、調子づいて節度を失なうべきではないということてしょう。


ここでは、松下さんは、お金、あるいは、遊ぶことを例にして、話をしていますが、どのようなことでも、どのような時でも、してはいけないことはしない。一線を超えるような、度を越すようなことはすべきではないということです。

親友だから、何を言ってもいい。しかし、親友だからこそ、言ってはならないこともある。親子だから、何を言ってもいい。しかし、親子だから、言ってはならないこともある。たとえ、冗談を言い合っていても、限度、節度を守らなければならないということでしょう。


だから、売り上げを伸ばす、利益を上げることも、度を越して、節度を超えて、してはいけないことまでして、売り上げや利益を上げることは許されないということです。


お互いに人間。時に度が過ぎることがありますが、「それは、キミ、度が過ぎてるよ」、「すべきでないことをしてるよ」と注意し合える、そのような会社が成長発展しますよ」と松下幸之助さんは、ここで、言いたいのでしょう。

2025.10.15
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投稿者

江口 克彦

講師 江口 克彦

松下幸之助のもとで23年間、直接指導を受ける。 現在、経営者塾を主宰して、松下幸之助の経営哲学の講義を続けている。札幌の「松翁会」、名古屋の「壷中の会」など全国数ヶ所で行われている。            内閣府 沖縄新世代経営者塾 塾長、憲法円卓会議 座長、内閣府 イノベーション25戦略会議 委員、内閣総理大臣諮問機関経済審議会 特別委員、松下電器産業株式会社 理事等を歴任。

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