経営は時代に合わせることが大事

結婚披露宴の案内がメールで来た。だが、一向に案内状が送られてこない。数日後、電話が架かってきた。「先生、出席してくださいね!」と言う。「一向に案内状が送られてこないね」と言うと、「えっ?メールが正式なんです」。彼とは、15年ほどの付き合いで、40歳前のIT関係の起業家。結婚式は、某セントグレース大聖堂で行い、披露宴は、その地下階で行うと言う。

その教会を調べてみると、教会ではなく、ブライダル会社が結婚式場として大聖堂を模して、結婚式、披露宴用に建てたのだという。

当日、新郎と新婦の宣誓式も、神父風の格好をした新郎の友人。外国人の口調で、その友人が喋る。すると、新郎と神父風の友人とが漫才。新婦も参加者も大笑。およそ、荘厳さはない。地下階の披露宴会場に行く。50人ほどが、小さな会場に入ったが、男性は、ほとんど私服。女性も、かなり大胆な装い。

「それでは、主賓の江口様からお言葉を」と司会者が言う。お祝いの言葉を手短に述べたが、私の後も、新郎とスピーチする者たちの掛け合い漫才。

これから、若者たちの結婚披露宴観は、荘厳さから、楽しさに変わる。時代とともに、やり方も考え方も変わるのだろう。結構なことだ。

経営も然り。戦後の経営の考え方も、大いに変化してきた。働き方も変わってきたし、週休二日制に変わってきた。重労働からロボットの活用によって、軽労働になってきた。だから、女性の人たちも働き手に加わるようになった。リアルで会社に出勤ということも、そればかりではなく、テレワークになってきた。要は、時代とともに、変えなければならないものがあるということである。

松下幸之助さんは、「事業を展開していくうえで、経営者が心得るべきことは、普遍性と時代性と国民性(地域性)である」と言っていた。普遍性は、「人間大事」、「人間から一切のことを考える」ということ。これは、いつの時代でも変わることはない。しかし、時代性、言い換えれば、その時代の技術、社会意識などによって、変えなければならないものは、変えなければならない。松下さんがよく言っていた。「人力車の時代と汽車の時代とは、考え方も働き方も変えんと、時代についていけんわな」ということになる。国民性(地域性)も、その国、その地域によって変えないといけない。この「三つの編み棒」を駆使して、経営を行うことが大事。それゆえ、経営者は、「人間大事」を厳守しながら、時代を読むことが求められると思う。

2023.11.15
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投稿者

江口 克彦

講師 江口 克彦

松下幸之助のもとで23年間、直接指導を受ける。 現在、経営者塾を主宰して、松下幸之助の経営哲学の講義を続けている。札幌の「松翁会」、名古屋の「壷中の会」など全国数ヶ所で行われている。            内閣府 沖縄新世代経営者塾 塾長、憲法円卓会議 座長、内閣府 イノベーション25戦略会議 委員、内閣総理大臣諮問機関経済審議会 特別委員、松下電器産業株式会社 理事等を歴任。

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