【「ありたい」と「なりたい」の違い?】

コーチング研修で必ず考えていただいている質問があります。「あなたはどんな〇〇であ
りたいですか?」という質問です。例えば上司の立場の皆さんには、「あなたはどんな
上司でありたいですか?」と質問します。

すると、「部下の話を否定せず聴く上司になりたい」、「部下から信頼され何でも相談に
のれる上司になりたい」といったお答えが挙がることがしばしばあります。「ありたいで
すか?」と問いかけているのに、「なりたいです」という言葉に自然と変換されてしまう
ことがかなりの頻度で起きます。

「似たようなものだからどちらでもいいじゃないか」と言われれば、まあそうかなとも思
ます。また、「なりたい」という言葉を使っていても「あり方」について話されている場
合もあるので、そんなに引っかかることではないのかもしれません。

とはいえ、「なりたい」と「ありたい」は、やはり少し違うということをお伝えしたいの
です。細かい話で恐縮です。「なりたい」とは、目指す理想の姿、ビジョンや目標といっ
たイメージです。「ありたい」とは、心の持ちよう、心の状態といったイメージです。

「部下を信頼する上司になりたい」というビジョンには、「あり方」が含まれていると言
えますが、「話を聴く」、「相談にのる」などは行動に過ぎません。行動はDoingであり、
あり方とはBeing(状態、存在)なのです。

コーチングでまず大切にしていただきたいのはBeingです。もちろん、どんな行動をとる
のか、どんなやり方で関わるのかも大切です。
しかし、どんな心のありよう(状態)で関わるのかによって、同じ行動でも相手に与える
印象が変わってしまうことがあります。例えば、本当はそう思っていないのに、口先だけ
で「信じているよ」と言って、胡散臭い印象を与えてしまうようなことです。

「あり方」とは、この瞬間からでもその立ち位置に立てるものです。「私は部下の可能性
を信じる上司でありたい」と思って向き合おうとすることは今すぐできます。そのあり方
で日々向き合うからこそ、自ずと部下の話を聴いたり相談に乗ったりする上司に「なれる」
のではないでしょうか。

決して、「なりたい」というビジョンや具体的な行動は軽視していいと言いたいわけでは
ありません。とかく、日頃はDoingにばかり意識が向いていることはないでしょうか。行
動だけでなく、どんな想いを持ってその行動を起こすのかにも意識を向けていただきたい
のです。「なりたい」と「ありたい」は少し違うのだと感じていただけたら幸いです。

2024.10.02
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投稿者

石川尚子

講師 石川尚子

パーソナルコーチを行う傍ら、「夢をかなえるコミュニケーション」「自発的な部下の育成」等をテーマとしたコーチング研修講師として活躍中。

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