「コーチングを学んだことがある」という方はここ10年でもかなり増えたと感じます。
が、「コーチングを実践している」という方は、その割にあまり多くない実感があります。
なぜ実践できないのか、その原因、理由は各々ですが、「『質問』が自分にとっても相手
にとっても心地よくなくて、コーチングをやめてしまう」といったお声が一定数あります。
心地よくないとはどういうことでしょうか。
質問される側にとっては、「コーチ側から正解を迫られているようでプレッシャーを感
じる」、「誘導尋問をされている気分」などの気持ちがあるようです。質問する側からは、
「質問がセリフのようになってしまい対話が不自然になる」、「質問してもすぐに答えが
返ってこないとコーチングの効果を感じにくい」といったお声が聞かれます。確かに
その気持ちはわからないでもないです。
先日、コーチング連続講座に参加されているAさんが、とても興味深い気づきを共有して
くださいました。Aさんは、チームリーダーとして、職場でコーチングを活かそうと実践
されています。
「質問をしていると、相手の興味とか話したいことではなくて、私が知りたいことを質問
してしまっていて、ああ、これは自己満足のコーチングになっていたんだなと気づきまし
た。『相手』と『私』っていうことで分断して考えるから良くないんだなと思ったので、
主語を『私たち』にしたらどうなんだろうって思ったんです。
そうすると、一緒に模索してる感があって、お互い話しやすいかなと感じたんです。ボー
ルを相手に向かって投げるんじゃなくて、ボールを二人の間に置いてみるっていうイメー
ジです。今までは、『このボールは今はあなたのボールなので、あなたがちゃんと返して
きてね!』という感じで向き合っていたと思うんです。二人の間にボールを置いたら、私
たちのボールになるから、一緒に考える空間になりやすいのかなと気づきました」
非常にイメージしやすいお話で、参加者一同、「なるほど!」と感じ入りました。「私が質
問してあげるからあなたが考えなさいよ」というあり方ではなく、「私たちの課題だから
一緒に考えてみようよ」というあり方に変わることで、質問する側もされる側も、コーチ
ングに対する違和感や抵抗感がなくなるのではないかと感じます。どんな質問をするかは
もちろん大切ですが、どんなスタンスで質問をするかによって、対話の空気感も変わって
いくのです。より心地よくコーチングを実践していただけると嬉しいです。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。