【人と向き合う基本姿勢】

先日、札幌市内の高校から、生徒さん向けの講演に呼んでいただきました。学校の場合、
体育館に集まった数百名の生徒の皆さんに、1時間ほど話をさせてもらうことが多いので
すが、今回もそのような場面でした。

よくある光景として、私が登壇する前に、ご担当の先生が皆さんの前に立たれて「はい!
静かにして!姿勢を正して!」というようなことをおっしゃいます。大勢を一度に動かそ
うと思ったら、この言い方が一番早いのかもしれませんが、コーチ業をやるようになって
から、少し違和感を覚える言葉となりました。
命令形の言葉で人を動かすことが、どうしても、「自発性」とは対極にあるような気がし
てならないのです。

今回は、私の登壇の前に、校長先生が生徒の皆さんの前に立たれました。体育館の中は、
少しざわざわしていて落ち着きのない雰囲気でした。校長先生がお話をされる前に、まず、
皆さんに向かって深く一礼をされました。目の前の相手への敬意に満ちたお辞儀に、思わ
ず、ぞくっとしましたが、次の瞬間、さらに心が震えました。あんなにざわざわしていた
空間が、一瞬にして静謐な空間に変わったのです。

生徒の皆さんが、校長先生の言葉を静かに待っている気持ちが伝わってきました。
「皆さん、こんにちは!」と校長先生が開口一番、挨拶をされました。「こんにちは!」
と皆さんも元気に挨拶を返していました。

「そうですよね!やっぱりこれですよね!人と向き合う時の姿勢って!」と思いました。
相手がどんなに目下の存在であったとしても、人としての敬意を払って向き合う。そんな人
に、相手も敬意を抱くのではないでしょうか。

挨拶の後の校長先生のお言葉も、コーチングマインドにあふれていました。
「前回の講演会の時も、皆さん、熱心に聴いていましたね。感想文を書いてくれてありが
とうございました。私は全員の感想文を読みました。感動しました。皆さん、本当にあり
がとう!今日も、皆さんはきっと良い気づきを得てくれると思っています」

相手を認め、感謝し、信じる気持ちを伝える。
自ずと、生徒の皆さんは、自主的に講演を聴こうという気持ちになるでしょう。言葉で相
手の身体だけを動かそうとするのではなく、心を動かす関わり。まさにコーチのような校
長先生だなと深く感動しました。

コーチングをしようとする時、何か気の利いた質問をしないとダメだと思っている人もい
らっしゃるかと思います。しかし、気の利いた質問の前に「相手に対する敬意」。これが
大前提ではないかと思います。この「人と向き合う基本姿勢」があれば、どんな質問であ
っても効果的に相手に伝わるものです。

2023.12.01
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投稿者

石川尚子

講師 石川尚子

パーソナルコーチを行う傍ら、「夢をかなえるコミュニケーション」「自発的な部下の育成」等をテーマとしたコーチング研修講師として活躍中。

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