「うちの社員は意識が低くて・・・」、「自分で考えない者ばかりで・・・」といったお
声を、研修前の事前打ち合わせで聞かせていただくことがよくあります。これは企業研修
に限ったことではありません。学校に出向くと、「うちの生徒は自己肯定感が低くて・・
・」、「落ち着きがなくて・・・」といった具合です。「改善すべき点がいろいろあって
気になります」というお話です。
それで、実際はどうなのかと言うと、だいたい良い意味で裏切られます。「思っていた以
上にすばらしい皆さんでした」と感じることのほうが多いです。もちろん、謙遜も多分に
あるでしょうし、身内を見る目はどうしても厳しくなりがちです。また、外部講師の前で
は、「良く見られよう」とする気持ちが受講者側にも働いているのかもしれません。
それらを差し引いたとしても、こんなにすばらしい資質を持った人たちばかりなのに、そ
こを見てあげられていないのは本当にもったいないことだと思います。できていないこと、
足りないところを見るのではなく、できていること、良いところに焦点をあてると、必ず
見えてくるものがあります。そして、そこに焦点をあてているほうが、人が伸びていくの
です。
そのことを先日お会いしたある企業の人事部の方が、非常に興味深い事例で話してくださ
いました。
「うちの会社に、人を再生させるのが上手い管理職がいまして、この人の部署に異動させ
ると、それまでパッとしなかった社員が急に輝き出したりするんですよ。いったい何をや
っているのかなと思って話を聴いてみると、部下の良いところをちゃんと見ているんです
ね。基本的に相手を『できる人』前提で見ているんです。そんなふうに見てもらえると、
部下も自信がついてくるんでしょうね。自分でも気づいていなかった力を発揮し始めると
いうことなんです」。
おっしゃる通り、焦点のあて方しだいで、もっと人は活かされるように思います。「でき
ない人」、「問題がある人」というフィルター越しに見ているとしたら、かなりの損失で
す。相手も自分もまったく力づけられません。
研修前に謙遜しておっしゃっていた研修のご担当者の方も、研修後には、こんな話をされ
ることがあります。
「彼があんなに明るい顔で話すなんて、今日初めて見ました。びっくりしました。ああい
うところもあるんですね」。
皆さんの周りにいらっしゃる方は、皆さんが思っているよりもずっとすばらしい人財だと
思います。そう思って一度じっくり向き合ってみていただけると、もっと成果が上がる組
織はたくさんあるはずです。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。