以前、「逆転の日」という取り組みをしている学校のお話をお聴きしたことがあります。
逆転の日には、保護者は自分の子どもが通う学校に午後から登校し、子どもがいつも座っている席で、担任の先生から授業を受けます。
子どものほうは、自宅に帰って、食事の準備をしながら保護者の帰宅を待ちます。子どもだけの作業には、もちろん危険も伴いますので、その日に向かって、保護者と相談し、準備や練習を行います。
かなり大胆でユニークな取り組みです。当然のことながら、お互いに気づきと学びがあります。保護者は、机に座って授業を受けながら、「先生、私を指名しないでほしいな」といった緊張感を味わいます。「授業を受けるって、けっこうプレッシャーだよね。うちの子はこんな気持ちでいつも授業を受けていたんだな」と思うわけです。子どものほうも、「ごはんの準備って大変なんだな。がんばって作ったものを喜んで食べてもらえたら嬉しいな」と思います。
「家に帰ったら、『いつもがんばっているんだね』と子どもをほめてあげよう」。
「お母さんが帰ってきたら、『いつもごはんを作ってくれてありがとう』と言ってあげよう」。
各々が相手の立場を体験することで、いつもの接し方が変わるのです。逆転の日のチャレンジ、本当にすばらしいな!と感動しました。
先日、お会いした経営者の方が、まさに同じようなことをおっしゃっていました。
「うちの会社に入社してきて、初めて出社する人の目から見たら、この職場はどう見えるのだろう?と、2年続けて新人が辞めていった時に思ったんです。新人が座る席で、1日仕事してみました。初めてオフィスに入る時、多分緊張するんだろうな。上司、先輩はどんな人だろう?話しかけやすいのかな?とか思うんだろうな。そんなこともあって、少しレイアウトも変えました。それと、あいさつ、声かけは絶対にこちらからしないとダメですよね。今のところ、今年の新人は元気にがんばってくれています」
この視点を誰しもが持てたら、職場も学校も家庭も、かなり変わるような気がします。
「相手の立場に立って考えましょう」という言葉は知っていますが、どこまでできているのでしょうか。「相手の立場に立つ」とは、どういうことなのか、時々、リアルに体験してみると良いかもしれません。私も、コーチングや研修を提供する者として、自分がコーチングを受ける、研修を受講する体験はこれからも絶対になくしてはならないと心に誓いました。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。