部門長にどのよう人材を選ぶかは、どの社長も最大の課題だろう。
会社の将来を考えると、社内で、経理担当者とか、技術者などのスペシャリストを後継責任者に登用したいという場合がある。
部門長となれば、スペシャリストでは済まされない。経理も技術も営業も製造等も、会社の全容に、ある程度の判断ができる知識や知恵が求められる。また、他部門との調整力も必要になってくる。加えて、人望もあるという、ゼネラリストでなければなるまい。
スペシャリストを部門の後継者にする場合、松下幸之助さんを見ていると、二つあったと思う。
ある部門長、例えば、事業部長を決める場合、一つは、数年かけて、その人材を各部門に配置転換し、他部門の仕事内容なり、人間関係を勉強させることであった。そうすることによって、その人材は、スペシャリストから、次第にゼネラリストに変身し、ある程度、全部門の内容と社内外の人間関係を知るゼネラリストの人材に成長する。他の社員も、彼が事業部長になるだろうと、暗黙の了承をするようになる。そのときに、部門長として、その任にあたらせても、周囲から不平不満は、ほとんど出てこない。これが、部門長育成の王道であろう。もちろん、その人材が、思ったように育たないときは、松下さんは、1、2年、様子を見て、別の人材を探すことをしていた。
もう一つは、すぐに、事業部長に指名する場合があった。その場合、松下さんは、後継者に指名した後、頻繁に、「なにか、ないか」、「なにか報告することはないか」など、電話を架けていた。「そうか、気をつけて取り組んでくれや」というときもあるし、「君、こういう方法もあるで」とアドバイスする。たびたび厳しく叱責することもあった。
このような育て方は、松下さんの言う、「任せて任せず」である。この言葉には、松下さんの「心配」と「激励」がある。すぐに、スペシャリストからゼネラリスト、すなわち、事業部長にしたのだから、その人材はゼネラリストになり切っていない。そういう事業部長に、「心配する」のは当然であるし、「励ましてやろう」という気持ちもある。要は、この場合、「任せっぱなし」にしないということである。
結局、おもに、そうした二つのやり方で、事業部長を育てていた。
最初からのゼネラリストは、まず、いない。スペシャリストから、ゼネラリストに変えること。それが、部門長を育成するということでもあるということである。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。