「その人の強みに焦点をあてましょう」、「強みを活かしていきましょう」とは、よく
言われる言葉です。もちろん、コーチングでも、そのスタンスで関わっていきます。ただ、
そう言うのは簡単ですが、実際には、「どうしたら相手の強みを見つけられるのか?」、
「本人に強みを自覚してもらうにはどうしたらいいのか?」といったご質問も寄せられま
す。
先日、コーチングをしている中で、ある管理職の方がこんなお話をしてくださいました。
「この前、職場でなんとなく雑談する機会があったんです。例えば、『好きなものは何?』
とか、『何をしている時が楽しい?」など、他愛もない話です。お互いに話すうちに、
一緒に働いているのに、知らないことがけっこうあるもんだなと思いました。
なるほど!Aさんは趣味でも仕事でも一人で黙々と集中して取り組むことが好きなんだな。Bさんは他
の人と一緒にアクティヴに動くことが好きなんだな。といった発見があったんです。
これは考えてみると、その人の強みなんじゃないかなと思って、任せる仕事ももっと工夫でき
そうだなと思ったんです」。
確かにおっしゃる通りです。「好き」、「楽しい」と思えることは、何かに対して肯定的
な感情が湧くということです。そんな肯定的な気持ちになれるものがあることは、すばら
しい強みと言えます。何気ないこうした雑談からも、強みは見出せるものだということを
教えてもらえる事例でした。
さらに、この管理職の方はこうもおっしゃっていました。
「強みというのは、案外、本人が自覚していないことのほうが多いものですね。自分では
当たり前にやってきたことは当たり前過ぎて強みと認識できないようです。よく、『体験
は資源』と言われたりしますけど、その人の成功体験や失敗体験などを聴いていくと、そ
こから強みが見えてくるなあとも思います。『なかなか特殊な体験をしているんだな』と
か、『そんなこともやっていたのか』とわかって、『それは強みだよ』と伝えました。相
手はとても意外そうにしていましたけど、嬉しそうでもありましたね」。
このような視点で、一人ひとりの話を聴ける人が増えたら、どんなに良いだろうなと思い
ました。「強み」というのは、何も専門的な知識や特殊能力に限ったことではないように
思います。何気ない対話の中から引き出されたり、自覚できたりするものではないでしょ
うか。あまり難しく考え過ぎず、相手に関心を持って対話をし合っていきたいものです。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。