私のクライアントさんの半数は、もう10年以上、コーチングを受け続けてくださっている
方がたです。私自身もそうですが、長く続けるほどに、コーチングの価値を実感し、欠か
せないものとなっていきます。毎週決まった曜日の決まった時間にコーチングの時間を確
保されているクライアントさんにとっては、すっかりルーティンとなっているようです。
そして、この長いお付き合いのクライアントさんほど、もう私が余計な質問などしなくて
も、ご自身でどんどん考え、行動を起こしていかれます。こちらは、相手をコントロール
しようとせず、話したいことを話してもらうだけです。
「仕事で成果をあげるため」のコーチングのはずですが、時には、ゴルフの腕が伸び悩ん
でいる話になったり、家族とけんかをした話になったりもします。このコーチングの時間
は、相手が話したいことを週に1回全部吐き出す時間として、どんな話も尊重して聴きま
す。
一切のジャッジ(良し悪しの判断)を加えず、すべてを聴き切ることに徹します。もちろん、
相手が喜んでいる時は、「本当に良かっですね!」と一緒に喜びます。気分が落ちこんで
いる時には、「そんなことがあったんですね」と気持ちに寄り添います。やっていることは、
本当にそれだけですが、吐き出した後は、相手が勝手に気づいていきます。
「まあ、こんなことばかり言っていても仕方ないですね。自分ができることに集中するだ
けですよね」、「今、大事な仕事をやり忘れていたことを思い出しました。今日、この後
すぐやります」といった言葉が出てきます。
吐き出すことで、気持ちと頭が整理され、次の行動に移りやすくなります。一度立ち止ま
って吐き出す(アウトプットする)時間は非常に大切だと実感します。
何か気の利いた質問ができないと、コーチングができないと思われている方もいらっしゃ
いますが、そんなことはありません。週に1回、どんなことがあったのか、どんなことを
感じているのかをただ聴いてあげるだけでも大いに効果があります。相手が立ち止まって
吐き出すサポートをするだけです。
その際、くれぐれも注意したいことは、相手の話を否定したり、正そうとしたりしないこ
とです。「それではうまくいかないとわかっているのに指摘しなくても良いのか?」と思
う場面もあるかもしれません。しかし、まず聴き切ります。そうすると、勝手に相手が気
づいていきます。
騙されたと思って、「週に1度のアウトプット」の機会を自分にも、相手にも作ってみて
いただけたら幸いです。
松下幸之助は、事に当たり「深刻に考えず、真剣に考える」ことが経営では大切であると言っています。
自分でコントロールできないことを手放し、コントロールできることに集中するということではないでしょうか。
しかし、何事も一人で解決するには限界があるといわれています。一緒に解決策・打開策を考えませんか。